第15話・蛮竜との戦い
愛樂達は険しい山を登り続けた。
「わっ、落ちそう!怖いですわ……」
「愛樂隊長、大丈夫?私は平気だよん!」
「そりゃ、空に浮かぶ月の国から来たお姫様からしたら転落なんて怖くないんだろうけども、愛樂が怖がるのは無理もないだろうな。大丈夫か?」
「(兄さんがまたクール気取ってますねぇ。いや、素がこういうキャラなんだっけ……?)」
いつも通りに会話をしながら頂上に到着した一行。蛮竜との対決も迫っていた。
「アイツ、ですわね……」
「うわっ、何あの黒いの!超邪悪!私の聖なる槍で清めてあげなきゃね☆」
そう言うと月姫は、一人で蛮竜デセルに立ち向かっていった。
「あっ、おい!勝手に行動するな、危な―」
守が呼びかけたものの、先に行動していたのは蛮竜の方だった。デセルは尻尾で月姫を払う。
バシッ
「キャッ!?」
月姫は数十メートル飛ばされ、その更に先の地面に彼女の槍が突き刺さった。
「月姫お姉さん!……デセルめ、待っててください、私の刀で切り裂きますよ!」
―グオオオオッ!
デセルが地面を揺るがすほどの雄叫びを上げる。討伐隊一同は怯み、しゃがみこんでしまう。
「くっ……よくも月姫を!私を怒らせましたわね!?」
愛樂が力強く立ち上がった。彼女は月姫から渡された杖を天に振りかざす。
「喰らいなさい!アロー!!」
愛樂はアローを唱えた!
「凄い、凄いよ愛樂!」
「こらこら、まも兄は守備に専念してください。あと、敵の行動妨害もお願いします」
「あっ、ハイ分かりました風和さんスミマセン!!」
何だかんだ言ってこの二人が一番仲が良いのでは……?
愛樂に引き続いて、守と風和も参戦する。
守は風和に言われた通り、デセルの足元でシールドバッシュを発動する。
「喰らえっ!」
「私に斬れないものはあまりありません!剣の錆にしてくれる!!」
風和は軽やかにデセルの肩の高さまで飛び上がり、デセルの身体の黒い結晶を斬りつけた。彼女は蛮竜の肩に乗って戦うようだ。
「へぇ、中学生の割に難しい言葉を知っていますのね……!」
下から愛樂が話しかけてきた。
が、彼女は何だか苦しそうだ……
「っ、痛いですわ。身体が持たなくなってきましたの……」
愛樂の白い肌は傷付き、ところどころ出血している。
変態騎士紳士がそれに気付いた。
「愛樂!大丈夫か!?待ってろ、今助ける!」
「守……すみませっ」
愛樂は蛮竜からの攻撃を受け続け、ボロボロになってしまっていた。
「愛樂!無理するんじゃない、デセルから離れろ!これ以上攻撃を受けたら……」
けれども、その声は弱りきった愛樂には届かない。
「く、くっそおおおおおっ!」
守はデセルに怒り任せに攻撃した。
その時、あの人物がやってきた……
愛樂の近況報告
どうも、愛樂です!
トーラムも長々と放置しておりましたが……ついに新たなゲームに手を付けてしまったことを報告致します。
そのゲームとは……
トーラムオンラインを開発したア●ビモさんが新たにリリースした『アルケミアストーリー』!
なんとこのRPG、ゲーム開始位置が2箇所に分断されていたり、たった一人のパートナーを自分で作成して一緒に街やフィールドをキャッキャウフフしながら歩けちゃうんですね(*´˘`*)♡
↑愛樂(アイラ)とパートナー(名前はセインにしました♪)がキャッキャウフフしている(?)図
一つ惜しいところをあげるとすれば、ゲームへの接続なのですが……w
(私はゲームにログインできない状態が続いています)
運営さんの対応に期待、ですね!
※トーラムはログインできるんだけどなぁ〜(。-∀-)
まだまだこちらのゲームは始めたばかりなので分からないことが多いのですが、学業とトーラムと両立しながら気長にやっていきたいです☆
ではでは〜(^^)/バイチャ
第14話・蛮竜デセル討伐隊、出陣式!(笑)
次の日になった。日の出と共に愛樂が起きる。
「ふああ、よく寝ましたわ」
いつも通りの起床。
に見えた。
「〜〜〜っ!?!?」
愛樂の横には守がすやすやと眠っていた。
「び、びっくりしましたわ……それにしても」
愛樂は守の顔をまじまじと見つめた。
「綺麗な顔立ちしていますわよねぇ。羨ましい」
そうは言うものの、愛樂も過去では何人もの男子にモテてきた。愛樂の顔面偏差値も高い。
「さてと、そろそろみんなを起こさねばいけませんね。デセル討伐は今日中に行うと事前に月姫と打ち合わせていましたから……」
しばらく前のことになる。
ある日の夜のことだった。匠の工房の屋根裏部屋で、二人は話し合っていたのだ。
「ねえ、愛樂。ちょっといい?」
深刻そうな顔をする月姫。何だか放っておけない愛樂は話を聞くことにした。
「ええ。どうされましたの?」
「……私、やっぱり黙っていられないの。自分の本当の身分」
「月の国の姫ではなかった、ということですの?」
「それは本当だよ!……でも、私は悪いお姫様なの」
「えぇっ、そんなはずは!」
「お願い、愛樂。黙って聞いててほしいの……ワガママ言ってごめんなさい」
「……分かりましたわ」
「私ね、犯罪者なの。月の国で罪を犯してしまったの。それも、次期女王になるはずだった双子の姉を殺したっていう……あ、わざとじゃないんだよ?その、槍を振り回していたら……っ、ううっ!」
苦しさのあまり涙を流す月姫の頭を、愛樂は優しく撫でた。
「それで、私が次期女王になるってことになったのだけど、罪を犯し、それを償わない以上は女王になる資格など無くて。罪を償うために私はこの世界にやって来たんだよ」
「そうだったのですか……辛かったのですね。話してくれてありがとうございます」
「まだ話は終わってないよ、愛樂」
まだあるのか……
「その、これは今日になって気付いたんだけど。どうやら、こっちの世界にいられるタイムリミットみたいなのがあるみたいなのよね。女王様には説明されてないけど」
「!?……そのタイムリミットを過ぎたらどうなるんですの?」
「恐らく、私は月の国の存在ではなく……完全に人間化してしまうでしょうね。こっちに来てから少しずつ月の力が衰えていくのを感じるの。私が完全に人間となった時には、次の次期女王候補が女王の座に着ける……月の世界の時間経過の早さはこちらの世界とは比べ物にならない。私はとっくに向こうの世界では死んでいることになる。つまり、私は向こうにとっては不要な存在になるわけよ」
「そんな……」
「だから、お願い。できるだけ早く、罪を償いたい……そのために、魔物討伐に行きたいの。私一人じゃ厳しいから……みんなと一緒に戦うの!」
「私と守の討伐目標は蛮竜デセルだけれど、月姫は何の魔物を討伐に行きたいのですか?」
「月の勘を働かせてみたら、この辺りで最も強い絶望のオーラを放っているのが蛮竜デセルみたいね。だから私もそこまで着いていく!そうすれば私は月に帰ることができるはず!……ごめんね、月に帰る方法分からない、とか初めに嘘ついて」
「いいえ?気にしておりませんもの♪そうと決まれば明日にでも旅支度をしてデセル討伐に参りましょう!」
愛樂が回想を済ませると同時に、全員が起き上がってきた。
「おはよ!んー、今日も良い天気だね♪」
月姫が可愛らしい笑顔でこちらを向いてきた。
愛樂は先程の回想での月姫の様子を思い出し、少し気まずくなったが、怪しまれないように微笑む。
「ええ、本当に」
その時だった!
「おい、何だこれは!?」
突然、守が叫んだ。
守以外の全員が彼の方を一斉に向いた。
「名、札が、落ちてるぞ……?」
何だ、名札か……心配して損した。と愛樂はくるりと背を向けたが、
「ひっ!?名札っ!?」
幼女はヤバイ!という様子で守の名札を奪おうとしている。まさか……
「は、早く返してください!直ちに返さなければ、たった今鋭く磨いたこの刀で切り刻みますよ!?良いんですか!?」(脅し)
「ははーん、お前の名札だったんだな。小学校にでも通っているのか?」
「中学です!どうでもいいでしょう!?早く返せよコノヤロー( `ω´ )」
「義務教育はきちんと受けないといけませんわよ?ね、風和ちゃん?」(名札📛を見ながらニッコリ)
「……っ!」
恥ずかしさのあまり、幼女・風和は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「いやぁ、良いもの見れたなぁ!ん、返すよ」
「い、今更遅いんですっ!もっと早く返してくだされば良かったのに……」
月姫は話について行けず困っている。
(名札って何だろう?まあみんな楽しそうだからいいのかな?)
↑☆茶番劇終了☆
それから数十分後……
愛樂が皆に声をかける。蛮竜との対決もいよいよだ。
「さ、さぁて!気を取り直してデセル討伐に向かいましょうか?」
「おおー!」
「……」モウヤダハズカシイ///
おかしい。一人分返事が足りない。
「あ、あの、まも―……!?」
女一同「「「踊ってる場合かっ!!!」」」
バコーン!
「あああ、すまない体がついー!」
↑☆茶番再び☆
「何回茶番繰り広げてるのよ……もう」
月姫が口を尖らせる。
「大体守が発端ですけどね……」チラッ
「す、すまない……」
何だか楽しそうな守をよそに、月姫は愛樂の方に向き直る。
「あの、愛樂。ちょっといい?受け取ってほしいものがあるの」
「ええ。何ですの?」
「ちょっとこれ着てみて?」
「愛樂サンのお着替えっ……!」ブシャッ
「……はあ、まも兄は変態騎士ですか」
「こ、これは一体……?っていうかどこに隠し持っていたのです!?」
「まあまあ、細かいことは置いといて。ゲームだもん。月の国の魔法使い用の装備だよ。これで愛樂は魔法が使えるようになる」
「そ、それならもっと早くに渡していただければ……」
「ごめんって〜!愛樂に十分に力をつけてもらってから、この装備を渡したくてさ。この衣、アルニグマって言うんだけど普通の人間には少々重めだし……」
「確かに少し重く感じますわね。でも、ありがとうございます」
「えへへ。それじゃあ行こっか♪」
蛮竜デセルを倒したら月姫とはお別れだ。愛樂は月姫の笑顔を見るのが辛くなってきた……
(ああ、駄目ですわ!この子は私達との旅を楽しもうとしているのに、私は何故これほどまで悲しい気持ちになるのでしょう!?)
一方その時の守。
「愛樂さんマジで可愛い」
(※守兄さんによる、愛樂お嬢様に向けての求愛ダンスwww)
……どうなることやら!?
茶番多くてすみません( ;∀;)
第13話・山の中腹にて
夜になった。戦い疲れたのか、月姫は地面の上でだらしのない格好で寝ている。これでも王女か。
幼女の方はトレーニングし足りないようで、山の下腹部まで降りて戦闘をしているようだ。
愛樂は手際良くテントを張るなど、野宿の準備をしている。
「おーい、月姫。こんな格好だと風邪引くぞ……む、起きないか」
守は月姫に体勢を変えて寝てもらうため、熱心に彼女を起こそうとしているが、難しいようだ。
「まあ、守。それでは駄目ですのよ。月姫はこう……」
月姫の間近でしゃがみこむ愛樂。そして、寝転がる彼女の無防備な顔の真ん中を……
フニッ
「フンガッ!」
摘んでみた。鼻を摘んだのだ。
「ブフッ……これじゃお姫様どころかまるで家畜―」
「まも?何か言った……?」ゴゴゴゴゴ…
怪訝な顔で月姫が起き上がる。とても迷惑そうな顔だ。
「……いや、何でもないんだ、忘れてくれ」
「んっふっふっふ♪愉快ですわねぇ」
↑ある意味一番恐ろしいのは愛樂なのでは?
愛樂により強引に起こされた月姫は、何とか体勢を変えて無事に大殿籠もってくれた。
月姫が眠ったのを確認して、彼女のそばを離れようとした愛樂。
何かに気づいた。
「!」
ポケットの中に何か入っている……
「クッキー……」
そう、プレゼント対決の際に守がくれたクッキーだ。
タイミング良く守が声をかけてきた。
「お、食べるのか?」
「ええ。いただいてもよろしくて?」
「ああ。少し不格好になってしまっているかもしれないが、食べてくれると嬉しい……」ゴニョゴニョ
照れている。そんな守をよそに、包みからクッキーを一個取り出す愛樂。
ボリッ
「ん……」モグモグ
「ど、どうだ……?」
一瞬、顔を歪ませる愛樂。嫌な予感がする守。
「ふふ、守。砂糖と塩を間違えましたわね?」
幸いにも、お嬢様は優しく微笑んでくれた。エメラルド色の瞳の奥には綺麗な星々も映っている。
「ひっ!?そ、そうか……全く気が付かなかった、すまない」
「いいえ、謝る必要などありませんわ。むしろ嬉しかったですもの。あなたが私のために心を込めて作ってくれたのでしょう?」
「あ、ああ……今度はちゃんと間違えないように作るからな」
「うふふ、ありがとうございます♪あ、でも折角ですから今度はリバイタでも作ってくださいませんこと?」
愛樂は笑顔で言ったのに対し……この男は
「!つ、つまりあのチャラ男と仲良くして作り方を請えと!?そんなことは俺のプライドが……ああっ」
全力で嫌がっている。そんな彼をよそに愛樂も寝る支度を始めてしまった。
(実はクッキーを作るのも人生で初だったというのに……俺はこのお嬢様に振り回されてばかりなんだなぁ)
守は愛樂の後ろ姿を見て、優しく微笑んだ。
「朝起きて隣に俺が寝ていたら、びっくりするかな?」
腕組みをしてしばらく考え込む守。
その姿を、彼女は目撃していた……
「ようようようようお兄さん、何を企んでいるのかなー?」
棒読みしているが、怪しく薄笑いを見せながら彼女はこっちに歩み寄ってくる。
「チビ―むごぉっ!?」
「チビ言うな。全く……バレバレなんですよ。愛樂お姉さんのことが好きなのでしょう?」
「んなっ!?このオラがおなごに恋したとでも言うべか!?」
「ブフォッ……!その口調で確信しましたね、はい」
ジャジャーン!!幼女、アウトー!
「ーっ!こ、子供はもうとっくに寝ている時間だぞ!こんな夜遅くまで何をしていた!?」
「……まもさんが言ったんじゃないですか、トレーニングして来ていいって」
「ぐぬぅ、そうだったような気がしなくもないんだ。悔しいですっ!」
(まも兄……こいつもネタ要員だったか……)
「はあ。最初から素直に認めればいいんですよ。どうして近頃の若い男はこうもプライドが高いんでしょうか?」
「いや……お前何年生きてんだよ。っていうか早く寝ろマジで!健康に悪いし」
「ならばお言葉に甘えますが……」
物語が少し進展しそうなニオイ!
どうなる守!?
愛樂によるブログ閲覧者の方々への謝罪会見(仮)
※この記事はヘクション! フィクションです。
愛樂の自宅前にて。
Reporter(以下:リ)「えー、大学生活が忙しいとはお伺いしていましたけど……またしばらくブログ更新できそうにないのは本当なのでしょうか!?」
愛樂「え、あ、ちょっ、落ち着いてくださいね!?」
リ「ゼェハァ……」
愛樂「結論から言います。ブログの更新頻度は再び下がります。数千円をかけての追試があるのでね(ドヤ顔)」
リ(ドヤるなよ……)
愛樂「とにかく、追試験が終わりさえすれば……いや、まだだ!実syu(ピーー;自主規制)も無事に終わることができれば!私は執筆活動に戻りますよ。私には文才などありませんがね。国語の成績は比較的悪いんです」
リ「そ、そうですか……(そこまで話さなくても)」
愛樂「理系のとある学部の大学生に夏休みなどない……!」ダッ
リ「あっ、まだ取材終えてないんですよぉ!逃げるのダメゼッタイ」
長くなりましたが(?)、2学期は追試にならないように普段から授業内容理解を心がけるようにしないといけませんね(^_^;)
ブログの方は亀🐢よりも遅いスピードでの更新になるかと思われますが(どんな比喩表現だよw)、長々とお付き合いいただいている読者の方々に感謝致します!
大学生になってもうそろそろ半年か……時の流れは早いですね( 'ω' 三 'ω' )
第12.5話・月姫の秘密
(ストーリー本編から少しだけ離れます)
月姫は月の国に住んでいたお姫様(名前の通りなのは置いておく)。そんな彼女が何故、愛樂達のいる世界に迷い込んでしまったのか……
現在の月の国を治めている女王には二人の娘がいる。いや、正確には『いた』。華月(かづき)と那月(なつき)という双子の娘だ。(華月が姉、那月は妹)
月の国では、女王が産んだ一番上の娘が次期女王と呼ばれる。だから、華月が次期女王様―つまり、『月姫』なのだ。
そう思われていた。
那月が月から追放される、その時までは。
幼い頃の華月は容姿が美しく、月の国の楽器―月光琴の扱いに長けていた。一方の那月も、容姿が美しいのは同じだったが……いくら練習を重ねても月光琴の腕前は上達しなかった。
ついには館(つまり彼女の自宅)を抜け出して、男子に混ざって武術を習うようになった。剣の扱いにも優れていたが、彼女が好み、最も熱心に練習した武器は槍だった。
槍は剣より重く、その分攻撃力がある。そこに惹かれて、那月は槍を用いるようになり……自ら槍を創造するようになった。
時は流れ、華月と那月は人間界でいう16歳の誕生日を迎えた。華月が女王の座を引き継ぐ日だ。
そんな日でも那月は槍の訓練に没頭していた。
「せいっ!はあぁっ!」
汗を流し、ふぅとため息をつく那月。周りの訓練生の男子達が彼女のもとに集まってくる。
「いやぁ、お前ってホントすげぇよな。俺達、剣を使うのだけでも疲れるのに……どんだけ力あるんだよ」
「あなた達が非力なのよ!もう少し体力つけて勝負しましょうよー、私はもう少し槍を振るのを練習するわ♪」
ケラケラと笑う那月。そこへ……
「那月、今日はあなたと私の16歳の誕生日でしょう?槍を練習するのはこの辺にして―」
華月がやって来
ブンッ
「家に―」
ザッ
「いっ……」
何かが切れる音がして、辺りに鮮血が飛び散った。
華月がその場に倒れる。
那月が目を見開き、手で口を覆い、華月のもとに駆け寄る。
「か、はっ……」
華月の目の焦点は合っておらず、体は段々と冷たくなっていった。
「い、嫌っ……やだ、やだ華月!死ぬなんて嘘っ!嘘でしょ!?」
必死に華月を揺らす那月。だが、もう華月は何も応じてはくれない。
「私は、たった一人の双子の姉を殺したんだ……私が、華月の人生を滅茶苦茶にしたんだ」
その後、那月にはいつもの笑顔など当然無く、自首をした。
罪を犯した那月は、華月の代わりに女王になれるはずもなく……人間界へと追放されてしまったのだ。
「那月。お前の犯した罪はとても重い。だが、女王様の娘である以上、いずれは女王とならねばならない。人間界で罪を償う……とは言えまいが、しばらく学べ。今のままではお前は女王になる資格はない。しかし、次期女王ということに代わりはない故にお前に『月姫』と名乗ることを許そう。行け、月姫」
こうして、月姫は自ら犯した罪を償うために人間界へと降り立ったのだ。
第12話・新たな出会い!?
蛮竜デセルを撃退するためにニセル山付近まで来た愛樂達。
「あ、足が痛くなってきましたわ……これは山頂まで身体が持たないかも」
「大丈夫か?少し休む?」
「いいえ、大丈夫ですわ。守、お気遣いありがとうございます」
「まも、私にくれたリンゴ余ってるなら愛樂にあげたら?」
「悪い、リンゴは月姫にあげたのが最後だったんだ」
「あっ……ごめんさっき食べちゃって」
「いや、いいんだ。気にするなよ」
最初は仲の悪そうだった2人も、今はまとまりがあるようで、愛樂はホッと安堵する。
その時、守が何かに気づいたように呟いた。
「あっ」
愛樂と月姫は驚いて彼を見た。
「あ、いや!何でもない……ちょっと転けそうになったもんだから、はは」
守は咄嗟に嘘をついた。
(あれは……この前の―)
「幼女!?」
声に出てしまった。しかも偶然にも幼女はこちらに気づいた。
「はっ……やべっ」
「何よー、まもって実は幼女が好きなタイプの男なの?」
「ち、ちがっ!……ってチビっ子もこっち見るな!あんたのことが嫌いってわけじゃないからな!?」
鋭い目で守を睨む幼女。双剣を構えている。
(き、切られる……!)
ジリジリとこちらに詰め寄って来る幼女。
「あの……今私修行中なので、出来れば話しかけないで貰いたかったんですけど。しかもチビっ子って……この間のお兄さんですよね?あっ、そういえば」
幼女は守に耳打ちする。
「想い人さんとはどうなったんですか?そこのポニテっぽいお嬢さんと付き合ったりしていらっしゃるんですか?」
(何でそっちなんだよ……2択で間違えられたのはショックすぎる!)
「っ、そんなことはどうでもいいだろう!?」
「そんなに照れなくても……まあ、折角ですし、皆さんここのボス倒しに来たんですよね?私もご一緒致しましょうか?」
「えっ、いいんですの?命の保証など出来ませんけど」
「何この子!超可愛い♪この月姫様が愛樂もあなたも守ってあげるからねっ?」
「え、ええ……可愛いは一言余計だと思いますけれど、それはどうも」
完璧にナメられている少女。
(俺的には凄く強そうに見えるが……うーん)
こうして幼女―いや、少女を加えたメンバーでニセル山へ向かう4人だった。