第3話・お嬢様とお姫様
ソフィアの街を出た愛樂は、戦闘慣れするためにラカウ平野に来た。
「弱そうな敵を倒していくのがいいかもしれませんわね。さてと、あの水色の毛皮の子犬みたいな敵を倒していきましょうか……ん?」
何かが上空から降ってくるのが見える。
「……さーいっ!」
???
何か言っているようだが……
よく見ると、愛樂の方に向かって落ちてくる。
「ひぃっ!?こっち来ますわ!」
ヒュオオォォッ!
「そこの人、助けてくださあぁぁいっ!」
「え、えええええっ!?ちょっ、無理―」
ドスンッ
「っ!」
「ひゃあっ!」
愛樂は降ってきた人間に思いっきり体をつかまれた。
……
「ったた……ちょっと、あなた強くつかみすぎですわ!」
「えっ、あっ、やばっ!でもお陰で私も無事だったわけだからいいでしょ?」
何だコイツ……助けてもらった割には感謝している感が薄い。
「はぁ。まあ相手が私でしたから良かったですけれども。他の人にはお礼を伝えるのが礼儀でしてよ」
「あ……そっか。ここは月じゃないのか。だから私の常識が通用しないのね」
空から降ってきた女は考え込んでいる。一体、この者は何者なのであろう?
「あの、失礼ですけれども……あなたは一体?申し遅れましたが、私は愛樂ですわ。冒険者ですの」
「私?私は月姫(つき)。まあ名前の通り、月に住んでいた王女なんだけれども、何か飛ばされちゃったみたい」
(いや、何でですのよ……普通月から地球まで飛んで来られるとかありえないでしょw)
「愛樂だっけ。月に帰る方法が見つかるまで、私と一緒にいてくれる?」
「は、はあああああっ!?」
ソフィアの工房のチャラ男も月姫も、とんだ発言をするものだ。月姫に関しては、王女であったためか、配慮というものを知らない。
「まあ、あなたのことでしょうから断っても私についてくるんでしょうね」
「ん?何のこと?」
……軽く殴りたいが我慢。
「なっ、何でもありませんわ。さあ、ついていらっしゃいな」
「わーい!愛樂、よろしくね!?」