第4話・月姫の力
ひょんなことから月姫と冒険することになった愛樂。彼女はラカウ平野で戦闘に慣れようとしていた。
「愛樂ー。遊ぼ?」
(こちらは遊んでいる場合じゃないんですのよ!私は早く強くなって、あの方とご一緒したいのに……ああ、お名前をお聞きしておけば良かった!)
「愛樂っ、私と遊びましょ!?」
戦闘もしないで駄々をこねる月姫。もう30分ほどこれだ。
「うるさいですわ、月姫!あなた、私についていくなら少しくらい手伝ってくださいまし!?」
愛樂が怒鳴ると、
「うぐぐ……」
不満気に頬を膨らませる月姫。
(まずい……やりすぎたかしら?)
「私だって出来るんだから!こんなモンスターくらい、一撃だもん!」
月姫は一瞬にして、魔法で槍を作り出した。
「よし、このでっかい青い獣みたいなの倒しちゃお!」
!?
ラヴァーカ……
愛樂が突き飛ばされたモンスターだ。月姫まで突き飛ばされたら、今度はどうなるか予測がつかない。
「月姫!!そのモンスターは―」
ヒュンッ
ヒュンヒュンッ!
サクッ……ドサッ。
「えっ……嘘でしょう?」
「えへへっ、ざっとこんなもんよ!どう?驚いた?」
愛樂は声を出せず、ただ頷くのみだった。
「私が愛樂のこと、守ってあげるね」
月姫がウインクする。面倒なお荷物かと思いきや、案外強くて可愛い部分もあるものだ。
「ええ、よろしくお願いしますわね」
この調子で、愛樂と月姫はモンスター討伐を進めた。
「痛た……だいぶ傷ついてしまいましたわ」
「大丈夫?一回やめたほうがいいんじゃない?」
「い、いえっ!まだまだ強くなれるはずですわ!」
正直、月姫に実力を見せつけられたのが悔しかった。か弱いお姫様のイメージがあったのに、まさかあんなに強いとは思わなかった。
「ちょっと、無理しちゃダメ―」
月姫が愛樂を引き留めようとしたその時!
「お姉さーん、いつまで狩りしてんのー?俺待ちくたびれちゃった!」
今度はチャラ男までやってきた。
「ん?何かこの子にすっごく見られてんだけど、どした?」
月姫はチャラ男を不快そうに見ている。
「む……気安く愛樂に話しかけないでくれる?愛樂は私のパートナーなの」
パートナーって……勘違いされかねないw
「あんたこそ、お姉さんとどこで知り合った!?しかも、何でお姉さんの名前まで……!」
「さっき。私が空から降ってきた時に助けてくれたの。愛樂は私の恩人なの」
「ふぅん。愛樂お姉さんか。俺は匠(たくみ)っつーの。向こうのソフィアの街で工房やってるぜ?良かったらあんたもイソーローしてく?」
意外な展開になった。この2人、仲悪そうだけど大丈夫か!?
「……私は月姫。愛樂が居候してるなら、それについて行くだけよ」
「よっしゃ!それなら、今からご飯にするから帰ろうぜ?」
結局、愛樂は今日一日で様々な出会いに恵まれた。
いつかは自分で家を持ち、自由に暮らすことを夢見ながら、一日を終えた愛樂だった。