第10話・二人のプレゼント
プレゼント対決の当日になった。
会場はソフィア政庁。
「ピーノ様不在なんだな……」
「そうみたいね。借りさせていただきましょう?」
「ああ」
匠、月姫、守が喋っているが、愛樂は少々困った顔をしている。
(ど、どうしてこんなことに……)
助けを求めて匠の方をチラ見する愛樂。
(お、俺だって分かんねぇよっ!この二人が勝手に話を進めたんじゃないか!?)
(だとしても、この二人、よくやってくれましたわね……あああ、どうしましょう!)
そんな愛樂の心境など知らない月姫が切り出した。
「さあ!そこの変なお兄さん?私と勝負よ!?」
「っ、変って……失礼発言やめろよな!?まあいい、俺が勝ったらタメ口も許さんぞ?」
「はいはい。私が負けるはずないでしょう?」
自信満々の月姫。服もオシャレに決めている。
(何だかんだ言っているが、月姫も美しいな。まるでどこかの国の姫君のような……まあ、愛樂には及ばないがな)
「何よ?そんなにジロジロ見て……私に勝てる自信無くしちゃった?」
「いや。何でもない。(俺の)プレゼント(→月姫)の様子を見ていただけだ」
「はあ?私、今愛樂へのプレゼントなんて持ってないけど?全く……意味分かんない!もうさっさと始めましょ!?」
「じゃあ、一斉にお披露目しよう。いいよな?」
「勿論よ!」
「……私からはもう何も言いませんわ、始めてくださいな」
愛樂が溜息をつく。その横で、何故か面白そうに見守る匠。
「いっせーの!」
月姫は自分に向かって指を差しながら可愛くポーズを取る。守は右手でクッキーを愛樂の方に差し出して、左手は月の背中を押し出している。
一番驚いていたのは愛樂……ではなく月姫だった。
「……な、んで?」
呆然とする月姫。
「って、勝手に私に触れないでよ!?こういう男は嫌ぃ―」
「愛樂。彼女が俺達のプレゼントだよ。あ、俺からはこのクッキーも」
月姫は動けなくなっていた。愛樂はしばらくの間固まっていたが、やっと我に返ったようだ。
「あの……二人とも、私のためにありがとう。でも、こんなくだらないことに時間を割かなくても―」
「「愛樂はくだらない人間なんかじゃない!」」
月姫と守の二人の声が重なる。
「「ハモるなよっ!」」
……
「「あっ……」」
(……こいつら、何だかんだ言って仲良いよな。まーも(守のアダ名)、月姫っちを選んで、俺に愛樂ちゃん譲ってくれよぉ!)
泣きそうな顔で守の方をガン見する匠ッキー🐭<ハハッ!
(却下。誰がお前なんかに渡すかよ。ってか『まーも』って何だ!?)←よく通じたなw
「お二人とも、プレゼントはありがたくいただきますわ。月姫……とクッキーね。でも、勝手に勝負するのはやめてくださいまし。それに、お二人のどちらかを選べだなんて、私にとって酷だと思いません?」
「あっ……ごめん愛樂」
「俺も途中から悪いとは思っていた……ごめんな」
「分かればいいのですわ。さあ、守の作ったクッキーを持って少し遠出しますわよ!?匠、お留守番頼みますわね!」
「ええ!?また俺ボッチー?ちぇ〜」←アルケミーだから仕方ない。
ガッカリして足取りが重くなる匠を一旦工房に戻してから、愛樂、月姫、守の3人はソフィアの外へ向かった。