第14話・蛮竜デセル討伐隊、出陣式!(笑)
次の日になった。日の出と共に愛樂が起きる。
「ふああ、よく寝ましたわ」
いつも通りの起床。
に見えた。
「〜〜〜っ!?!?」
愛樂の横には守がすやすやと眠っていた。
「び、びっくりしましたわ……それにしても」
愛樂は守の顔をまじまじと見つめた。
「綺麗な顔立ちしていますわよねぇ。羨ましい」
そうは言うものの、愛樂も過去では何人もの男子にモテてきた。愛樂の顔面偏差値も高い。
「さてと、そろそろみんなを起こさねばいけませんね。デセル討伐は今日中に行うと事前に月姫と打ち合わせていましたから……」
しばらく前のことになる。
ある日の夜のことだった。匠の工房の屋根裏部屋で、二人は話し合っていたのだ。
「ねえ、愛樂。ちょっといい?」
深刻そうな顔をする月姫。何だか放っておけない愛樂は話を聞くことにした。
「ええ。どうされましたの?」
「……私、やっぱり黙っていられないの。自分の本当の身分」
「月の国の姫ではなかった、ということですの?」
「それは本当だよ!……でも、私は悪いお姫様なの」
「えぇっ、そんなはずは!」
「お願い、愛樂。黙って聞いててほしいの……ワガママ言ってごめんなさい」
「……分かりましたわ」
「私ね、犯罪者なの。月の国で罪を犯してしまったの。それも、次期女王になるはずだった双子の姉を殺したっていう……あ、わざとじゃないんだよ?その、槍を振り回していたら……っ、ううっ!」
苦しさのあまり涙を流す月姫の頭を、愛樂は優しく撫でた。
「それで、私が次期女王になるってことになったのだけど、罪を犯し、それを償わない以上は女王になる資格など無くて。罪を償うために私はこの世界にやって来たんだよ」
「そうだったのですか……辛かったのですね。話してくれてありがとうございます」
「まだ話は終わってないよ、愛樂」
まだあるのか……
「その、これは今日になって気付いたんだけど。どうやら、こっちの世界にいられるタイムリミットみたいなのがあるみたいなのよね。女王様には説明されてないけど」
「!?……そのタイムリミットを過ぎたらどうなるんですの?」
「恐らく、私は月の国の存在ではなく……完全に人間化してしまうでしょうね。こっちに来てから少しずつ月の力が衰えていくのを感じるの。私が完全に人間となった時には、次の次期女王候補が女王の座に着ける……月の世界の時間経過の早さはこちらの世界とは比べ物にならない。私はとっくに向こうの世界では死んでいることになる。つまり、私は向こうにとっては不要な存在になるわけよ」
「そんな……」
「だから、お願い。できるだけ早く、罪を償いたい……そのために、魔物討伐に行きたいの。私一人じゃ厳しいから……みんなと一緒に戦うの!」
「私と守の討伐目標は蛮竜デセルだけれど、月姫は何の魔物を討伐に行きたいのですか?」
「月の勘を働かせてみたら、この辺りで最も強い絶望のオーラを放っているのが蛮竜デセルみたいね。だから私もそこまで着いていく!そうすれば私は月に帰ることができるはず!……ごめんね、月に帰る方法分からない、とか初めに嘘ついて」
「いいえ?気にしておりませんもの♪そうと決まれば明日にでも旅支度をしてデセル討伐に参りましょう!」
愛樂が回想を済ませると同時に、全員が起き上がってきた。
「おはよ!んー、今日も良い天気だね♪」
月姫が可愛らしい笑顔でこちらを向いてきた。
愛樂は先程の回想での月姫の様子を思い出し、少し気まずくなったが、怪しまれないように微笑む。
「ええ、本当に」
その時だった!
「おい、何だこれは!?」
突然、守が叫んだ。
守以外の全員が彼の方を一斉に向いた。
「名、札が、落ちてるぞ……?」
何だ、名札か……心配して損した。と愛樂はくるりと背を向けたが、
「ひっ!?名札っ!?」
幼女はヤバイ!という様子で守の名札を奪おうとしている。まさか……
「は、早く返してください!直ちに返さなければ、たった今鋭く磨いたこの刀で切り刻みますよ!?良いんですか!?」(脅し)
「ははーん、お前の名札だったんだな。小学校にでも通っているのか?」
「中学です!どうでもいいでしょう!?早く返せよコノヤロー( `ω´ )」
「義務教育はきちんと受けないといけませんわよ?ね、風和ちゃん?」(名札📛を見ながらニッコリ)
「……っ!」
恥ずかしさのあまり、幼女・風和は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「いやぁ、良いもの見れたなぁ!ん、返すよ」
「い、今更遅いんですっ!もっと早く返してくだされば良かったのに……」
月姫は話について行けず困っている。
(名札って何だろう?まあみんな楽しそうだからいいのかな?)
↑☆茶番劇終了☆
それから数十分後……
愛樂が皆に声をかける。蛮竜との対決もいよいよだ。
「さ、さぁて!気を取り直してデセル討伐に向かいましょうか?」
「おおー!」
「……」モウヤダハズカシイ///
おかしい。一人分返事が足りない。
「あ、あの、まも―……!?」
女一同「「「踊ってる場合かっ!!!」」」
バコーン!
「あああ、すまない体がついー!」
↑☆茶番再び☆
「何回茶番繰り広げてるのよ……もう」
月姫が口を尖らせる。
「大体守が発端ですけどね……」チラッ
「す、すまない……」
何だか楽しそうな守をよそに、月姫は愛樂の方に向き直る。
「あの、愛樂。ちょっといい?受け取ってほしいものがあるの」
「ええ。何ですの?」
「ちょっとこれ着てみて?」
「愛樂サンのお着替えっ……!」ブシャッ
「……はあ、まも兄は変態騎士ですか」
「こ、これは一体……?っていうかどこに隠し持っていたのです!?」
「まあまあ、細かいことは置いといて。ゲームだもん。月の国の魔法使い用の装備だよ。これで愛樂は魔法が使えるようになる」
「そ、それならもっと早くに渡していただければ……」
「ごめんって〜!愛樂に十分に力をつけてもらってから、この装備を渡したくてさ。この衣、アルニグマって言うんだけど普通の人間には少々重めだし……」
「確かに少し重く感じますわね。でも、ありがとうございます」
「えへへ。それじゃあ行こっか♪」
蛮竜デセルを倒したら月姫とはお別れだ。愛樂は月姫の笑顔を見るのが辛くなってきた……
(ああ、駄目ですわ!この子は私達との旅を楽しもうとしているのに、私は何故これほどまで悲しい気持ちになるのでしょう!?)
一方その時の守。
「愛樂さんマジで可愛い」
(※守兄さんによる、愛樂お嬢様に向けての求愛ダンスwww)
……どうなることやら!?
茶番多くてすみません( ;∀;)