第11話・茶番劇inラカウ
「愛樂、どこまで行くの?私お腹空いちゃったー」
ソフィアの街の外、ラカウ平野を歩いている愛樂と月姫と守。口を尖らせながら不機嫌そうに歩いているのは月姫だ。
「結構先まで行きますのよ?寺院の先まで……蛮竜を倒しに行きましょう。このあたりの冒険者達の間では蛮竜討伐が流行っているらしいのですわ」
不機嫌な月姫に対し、愛樂はかなりウキウキしていた。彼女は先頭を歩いている。その後ろに月姫、守と続く。
「ほら、月姫。リンゴ食うか?」
守がリンゴを月姫に差し出した。
「えっ、いいの?すっごく美味しそう!まも、ありがと!」
守はアダ名で呼ばれやすいのか、『まも』やら『まーもん』と街でも呼ばれるようになった。
(『まも』はまだしも、『まーもん』って魔物みたいじゃないか?)
▷我こそは、闇の世界の帝王・マーモンだ!
▷さあ、世界は今こそ我のモノ(ry
……くだらないことを考えてしまった。
「まも、どうしたの?」
「いや。何でもない……ふっ」
「……?守らしくなくってよ?悩んでいることがあるのなら仰ってくださいな」
「あ、ああ……すまない」
(ダメだ、空想世界で自分が闇の帝王になったとか言えない!!!)
そんな守は愛樂の方をそっと見た。
愛樂はしばらく前を向いて歩いていたが、チラッと守の方を見てきた。
目があった。
「〜〜〜っ!」ブンッ
愛樂が勢い良く向き直る。
守も気まずそうに俯く。
それをリンゴを食べながら見ていないふりをしていた月姫。
(愛樂もまもも何してるんだろ……顔真っ赤にしちゃって、熱でもあるのかしら?)
「まも、リンゴみたい」
「ぶっ!?な、何だ月姫か」
「何よ、愛樂が良かった?」ニヤニヤ
「ち、違う!からかうなってことだ!月姫、何歳だ?」
「え、私?……うーん、16くらいかな。よく分からないや。月では年齢というものが存在しなくって」
「何だかアバウトだな……俺は18」
「えっ、私より老けてる!?」
「老けてる言うなっ、俺の方がお兄さんだぞ?」
そのやり取りを愛樂はこっそり聞いていた。
(仲がよろしいようで安心しましたわ……けど、このモヤモヤは一体何でしょう?)
一方で月姫は。
(あっ、何してるんだろ、私……二人の邪魔してるじゃない!)
気まずさが残る。無理矢理話題を作る愛樂。
「ま、守は蛮竜倒したことあるんですの?」
「えっ?あ、俺は……一応」
「へえ、流石守ですわね。月姫はどうしてそこまで強くなったんですの?特に魔物と戦ったり……とかは無さそうですから気になって」
(守、愛樂に褒められ陰でニヤける)
「え?私……何でだろう、あははっ」
何かを隠したような言い方。愛樂は少し違和感を覚えたが、何も突っ込まないでおいた。